金刀比羅宮

奥書院

秘蔵の至宝が眠る館

香川県の金刀比羅宮には、芸術家たちの傑作が数多く収められています。なかでも、奥書院はほとんどの壁や襖が精巧な絵画で飾られていて、特別な機会にだけ公開されます。

奥書院は、江戸時代前期1659年頃に建立されました。表書院が客人を迎える場だったのに対し、奥書院は住職の住居として使われていました。

最も有名なのは、主室である「上段の間」に描かれた障壁画、江戸時代中期から後期に活躍した絵師・伊藤若冲による『百花の図』です。アジサイ、ハス、シャクヤク、キクなど、201点もの色鮮やかな植物が四方に描かれています。なかには、京都出身の若冲には珍しかったはずの熱帯の植物ハイビスカスも。これらの植物は、当初は真っ白な背景に描かれていましたが、のちに金砂子が施されました。

若冲は描く題材を徹底的に観察し、ち密に描写したことで知られています。『百花の図』にも、枯れかけた葉や虫食いの跡までもがありのままに描かれています。

東側にある2つの部屋には、のどかな水辺の情景が描かれています。これらは江戸時代後期の絵師・岸岱による作品です。岸岱は鳥や動物の絵を得意としていました。『柳に白鷺の図』は、鷺が飛び立ち、しだれ柳の葉の間を飛び、浅瀬に降り立って餌をついばむ様子がまるでアニメーションのように表現されています。

隣接する部屋の『花菖蒲に水禽の図』は、水辺に咲く菖蒲と、水鳥たちが躍動する真夏の情景を描いています。カワセミやシギなど、鳥たちが歩いたり飛び回ったりする様子が、画面に躍動感を与えています。

同じ部屋の長押の上には、400匹以上の蝶の群れが緻密に描かれています。岸岱は、地元の自然研究者が収集した標本を基にこれらの蝶を描いたと考えられています。さまざまな蝶たちが生き生きと群れを成し、いまにも、眼下に広がる平野へと舞い飛んでいくようです。

奥書院は1955年に国の重要文化財に指定されました。貴重な障壁画の数々と、その外に広がる讃岐富士を借景とする庭園。奥書院は金刀比羅宮の美の宝庫の一つです。

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